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ネットワーク上の PST (OST) 【前編】推奨されない理由と発生する問題

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こんにちは。日本マイクロソフト Outlook サポート チームです。

Outlook は PST や OST と呼ばれるデータ ファイルを使用しますが、特にシンクライアントの環境などで、こうしたデータ ファイルをファイル サーバー上に配置して Outlook からネットワーク越しにアクセスさせる構成がサポートされるかどうかという点や、また、この構成上で発生する問題についてお問い合わせをいただくことがあります。

こうした構成についての技術情報として、マイクロソフトは以下の KB297019 を公開しており、その中で詳細にご説明しています。

   Title : LAN リンクまたは WAN リンク上での個人用フォルダー (.pst) ファイルの使用の制限
   URL : <http://support.microsoft.com/kb/297019/ja>

今回は、この KB297019 に記載された内容やその関連情報を噛み砕いてご紹介いたします。


ネットワーク越しの PST アクセスにより発生する問題
まず、前提として、PST (OST) はネットワーク越しのアクセスを前提として設計されておらず、どのような構成であっても以下のような問題が発生する可能性があるため、マイクロソフトは推奨していません。

・ Outlook のパフォーマンスが低下する (数秒から、数分単位で Outlook が応答なしになるなど)
・ アクセス中にネットワークの切断が発生した場合に Outlook データ ファイルが破損する
・ データ ファイルを配置したサーバーがリソースの枯渇によりダウンする

3 つめのサーバー ダウンについては、以下の技術情報を公開しています。

   Title : ネットワーク経由でpst ファイルを参照している場合、ファイルサーバー上でメモリ枯渇による STOP エラーが発生する場合がある
   URL : <http://support.microsoft.com/kb/2709155>


なぜ、上述のようなパフォーマンスの悪化が発生するのか、という点については、次回の記事で例を挙げながら説明していきます。

サポート対象のシナリオ
ネットワーク上の PST ファイルや OST ファイルを利用している場合であっても、KB297019 内でもご説明しているように一部のシナリオでのみネットワーク越しの PST (OST) アクセスはサポート対象となります。ただし、その場合も上述したようなリスクが発生する可能性があるため、ネットワーク上で遅延が発生する懸念がないかという点や、データ ファイルを配置したサーバーのリソースが枯渇しないかの管理が必須となります。また、サポート対象内の構成であっても Outlook のパフォーマンス上の問題が発生した場合、解決策がネットワーク越しの PST (OST) へアクセスすることをやめていただく以外に解決策がない可能性があるため、注意が必要です。

サポート対象の構成についてまとめると以下のようになります。

   <サポート対象の構成>
   以下のすべてを満たしている場合のみ、サポート対象となります。
   ・マイクロソフトのリモート デスクトップ セッション ホスト (RDSH) または仮想デスクトップ インフラストラクチャ (VDI) を使用している
   ・ホスト サーバーが Windows Server 2008 R2 もしくは Windows Server 2012 / 2012 R2
   ・帯域幅が広く、遅延が少ないネットワーク接続を使用している
   ・1 つの PST または OST に対して複数のクライアントからアクセスしない (PST または OST ごとに 1 つの Outlook クライアント)

   <サポート対象外の構成>
   以下の条件に 1 つでも合致する場合はサポート対象外です。
   ・1 つの PST または OST に対して複数のクライアントからアクセスする構成
   ・帯域幅が狭く、遅延の多いネットワーク接続を使用している
   ・サード パーティのリモート デスクトップ セッション ホストを使用している
   ・サード パーティの仮想デスクトップ インフラストラクチャを使用している
   ・ホスト サーバーが Windows Server 2008 R2 か Windows Server 2012 / 2012 R2 ではない


ここで、RDSH や VDI をご存じでないという場合は、以下のサイトをご参照ください。

   Title : リモート デスクトップ セッション ホスト (RD セッション ホスト)
   URL : <http://technet.microsoft.com/ja-jp/library/cc742806.aspx>

   Title : Microsoft 仮想デスクトップ インフラストラクチャ (VDI)
   URL : <http://www.microsoft.com/ja-jp/windows/enterprise/products-and-technologies/virtualization/vdi.aspx>


ネットワーク越しのアクセスを避ける構成
それでは、シンクライアント環境などを構築する際、どうした構成であれば問題を避けることができるでしょうか。

マイクロソフトが推奨するのは、以下のいずれかの構成です。

・ローカルに PST や OST を配置する
・オンライン モード (非キャッシュ モード) の Outlook を使用して Exchange Server へ接続する

Exchange Server を使用しない POP や IMAP 接続の環境では Outlook は必ず PST ファイルを使用するため、ローカルに PST を配置し、ネットワーク越しのアクセスを回避する構成について検討する必要があります。これは Exchange 環境でキャッシュ モードの Outlook を使用する場合も同様です。

ここで、移動ユーザー プロファイルを使用する環境では他にも注意すべき点があります。もし、ローカルに Outlook のデータ ファイルを配置することを目的として、ユーザーがログオン時にダウンロードするファイルに PST や OST を含める構成にした場合、PST や OST の容量が大きいためにダウンロードに時間がかかり、ログオンの処理が遅延するという別の問題が発生することが予想されます。そのため、移動ユーザー プロファイルを使用する場合は、Exchange Server とオンライン モードの Outlook を使用した環境の構築をご検討ください。

オンライン モードの Outlook はローカルにキャッシュを持たずに直接 Exchange Server 上のメールボックスを参照する動作を行うため、データ ファイルを使用しません。(オンライン モードは Exchange 環境でのみご利用いただけます。)

また、オンライン モードの Outlook でメールボックスの容量が大きくなった際のデータの退避先として、以下の構成もお勧めします。

・Exchange Server のオンライン アーカイブを使用する

オンライン アーカイブは Exchange Server 上でデータのアーカイブ先を提供する機能となっています。ユーザーがメールボックスの容量制限を超えてアイテムを保存したい場合にご利用いただけます。また、メールボックス上のデータ容量やアイテム数が大きくなることで、Outlook のパフォーマンスに悪い影響が出るので、こうした問題を避けるためにも、オンライン アーカイブに定期的にアイテムを退避する運用についてご検討ください。

なお、Outlook や Exchange のエディションによって、オンライン アーカイブが使用できないものもあるので、環境構築前に必ず以下のリンク内の情報もご確認ください。オンライン アーカイブは資料によっては個人アーカイブ、個人用アーカイブと表記される場合があります。

   Title : 個人用アーカイブと保持ポリシーのライセンス要件
   URL : <http://office.microsoft.com/ja-jp/outlook-help/license-requirements-for-personal-archive-and-retention-policies-HA102576659.aspx>


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