執筆者: Tejas Karmarkar (Principal Program Manager, Azure Compute)
このポストは、9 月 26 日に投稿された Availability of H-series VMs in Microsoft Azure の翻訳です。
Azure Virtual Machines に新たに H シリーズが追加されます。この新しい VM サイズは、Azure で HPC アプリケーションに対応する優れたパフォーマンスを実現するために提供されるものです。H シリーズ VM は、あらゆるコンピューティング集中型ワークロードに適しており、計算流体力学、衝突シミュレーション、地震探査、気象予測シミュレーションなど、エンジニアリングや科学研究関連の複雑なワークロードに対して最高のパフォーマンスを発揮するように設計されています。
H シリーズ VM は最初に Azure 米国中南部リージョンで提供が開始され、その後他のリージョンにもロールアウトされます。
H シリーズ VM は 6 つのサイズが用意されており、すべて Intel E5-2667 V3 3.2 GHz (3.5 GHz までクロックアップ可能) プロセッサを搭載しており、DDR4 メモリと SSD ベースのローカル ストレージを使用しています。また、FDR InfiniBand ネットワークを利用した専用の RDMA バックエンド ネットワークを備え、きわめて低いレイテンシを実現しています。RDMA ネットワークとは、緊密に連携したアプリケーションを実行する場合の MPI (Message Passing Interface) トラフィックに特化されたメカニズムです。
Microsoft Azure は、多くのエンタープライズ企業のお客様で HPC ワークロードの実行に活用されています。これらのお客様は、Azure の強力な演算能力を活用してさまざまな HPC ジョブを実行し、複雑な実験計画法 (DOE) や最適化などの重要プロジェクトの問題を解決しています。主要パートナー様の 1 社である Altair Engineering Inc. が提供するエンタープライズ コンピューティング製品スイートは、お客様のオンプレミス環境と Azure H シリーズ VM の統合を実現したすばらしい実例です。
「当社では、非ハイパースレッド型のコンピューティングとネットワークに最適化された H シリーズ VM が Azure に新しく導入されたことを非常に嬉しく思います。マイクロソフトのチームとはこれまで緊密に協力して、当社ソリューションの H シリーズ VM でのパフォーマンスとスケーリングをテストしてきました。このテスト結果から、当社のお客様に優れたパフォーマンスを提供できると確信できただけでなく、Azure 環境と緊密に統合された HPC クラウド環境を実現できるとさらに自信を持つことができました。」(Altair Engineering Inc、CTO、Sam Mahalingam 氏)
H シリーズ VM では、さまざまなアプリケーションを高パフォーマンスで実行できます。このため、世界中の企業で製品開発サイクルの短縮や製品の市場投入の迅速化のためにお役立ていただけます。
「当社では、InfiniBand および Linux RDMA テクノロジを搭載した高パフォーマンスの H シリーズ VM が Azure で新たにリリースされたことをたいへん嬉しく思っています。このパフォーマンスにより、シミュレーションを利用した製品設計サイクルが短縮され、技術者は速やかに設計の改良点を見つけ出せるようになっています」。(Siemens Business、CD-adapco 部門プロダクト マネージャー、Keith Foston 氏)
H シリーズ VM は、自動車の複雑な衝突シミュレーションの問題に取り組むお客様にもオンデマンドの演算能力を提供しています。d3View などのパートナー様は、必要に応じて大規模な演算能力をお客様に提供しています。
「H シリーズ VM が備えるクラス最高レベルの演算能力と容量は、まさに当社が必要としていたものです。E5-2667 プロセッサと RDMA InfiniBand ネットワークが採用された Azure H シリーズの登場により、数百コアに及ぶ大規模なシミュレーションを実行する際にも、担当エンジニアや研究者の作業工程を短縮できます。LS-DYNA などのマルチフィジックス シミュレーション ソフトウェアは、数千プロセッサ規模へのスケーリングに対応する設計となっているため、この H シリーズによってシミュレーションによる設計評価の高速化が期待されます。」(d3View、CEO、Suri Bala 氏)
H シリーズ VM では FDR InfiniBand により実現される低レイテンシの RDMA ネットワークが採用されていますが、特に H16r サイズや H16mr サイズでは、非常に大規模な計算流体力学 (CFD) シミュレーションを実行する場合に必要なスケーラビリティとパフォーマンスが理想的な形で得られます。
「新しい H シリーズ VM の RDMA テクノロジは、大規模なスケール アウトが必要なジョブをクラウドで実行する場合に欠かせない技術です。ここ数年で最高レベルにまで達したクロック周波数と共に RDMA テクノロジを利用することで、ジョブを多数のノードにスケールアウトすることができます。TotalCAE Portal での CFD コードのテストではコア数が非常に多い環境で実行時間が短縮されましたが、これは Azure で RDMA テクノロジが採用されなければ不可能なことでした。」(TotalCAE、CEO、Rod Mach 氏)
RDMA 非対応の H シリーズ VM は、Azure Marketplace で提供されている各種 Linux ディストリビューションおよび Windows Server OS イメージでデプロイできます。RDMA に対応した H シリーズ VM は、Windows Server 2008 R2、Windows Server 2012、Windows Server 2012 R2、CentOS ベースの 7.1 HPC、SUSE Linux Enterprise Server 12 SP1 HPC イメージでデプロイできます。詳細情報および使用を開始する際のクイック ガイドは、Linux の場合はこちら、Windows の場合はこちらをご覧ください。
マイクロソフトは今回のリリースによりクラウドにおける HPC への取り組みを 1 歩前進させることができました。今後も世界中のエンジニアや研究者向けに世界最高クラスのハイ パフォーマンス コンピューティング インフラストラクチャをクラウドから提供するために全力で取り組んでまいります。