IoT をもっと「簡単」「便利」「使いやすい」ものにしたい。このようなコンセプトで「CONPROSYS」を発表し、グローバル展開を行っているのが株式会社コンテック (以下、コンテック) です。CONPROSYS は 2016 年 4 月に「Azure Certified for IoT」認定も取得。さらに同社は東京エレクトロン デバイス株式会社 (以下、TED) をパートナーに、自社小牧工場で CONPROSYS と Microsoft Azure を組み合わせた IoT システムを導入する実証実験も実施、その内容を IoT 活用のショーケースとして公開しています。
今回は、コンテックで CONPROSYS の販売促進を担当する簀戸 洋希 氏、小牧工場の実証実験を推進する日比野 一茂 氏、マーケティングを担当する金田 健一 氏、TED の谷脇 俊之 氏に、CONPROSYS の特長と実証実験の内容、今後の取り組みなどについてお話をお聞きしました。
写真左より、東京エレクトロン デバイス株式会社 IoTカンパニー エンベデットソリューション部 部長代理 谷脇 俊之 氏、株式会社コンテック グローバル営業本部 CONPROSYS販売促進チーム チーム長 簀戸 洋希 氏、株式会社コンテック グローバル営業本部 販売促進グループ マーケティングチーム チーム長 金田 健一 氏
「CONPROSYS」の概要
―― まずは小牧工場に導入されている CONPROSYS についてお教えください。
簀戸 当社は 1975 年の創業以来、産業用コンピューターやネットワーク機器、PC を活用した計測制御機器の提供を行い、30 年以上にわたって PC ベースの電子計測、FA 制御の市場をリードしてきました。このような技術開発や数多くの導入実績で得られた経験を基に、「簡単」「便利」「使いやすい」を追求した M2M/IoT ソリューションが、CONPROSYS です。CONPROSYS ブランドの製品は 2015 年 5 月からグローバル展開しており、2016 年 4 月に「Azure Certified for IoT」の認定を取得しています。
―― CONPROSYS ブランドには、どのような製品がラインアップされていますか。
簀戸 サーバー連携機能を標準搭載し、センサーやアクチュエータに接続した IoT 環境を簡単に構築できる「M2M コントローラシリーズ」。マルチベンダーの PLC (Programmable Logic Controller) からデータ収集を行い、既存設備を簡単に IoT システムと連携できる「M2M Gateway シリーズ」。国際標準 IEC 61131-3 準拠 CODESYS プログラミングに対応したリアルタイム制御エンジン「PAC シリーズ」がラインアップされています。いずれも省電力で幅広い温度に耐える高信頼なハードウェアになっており、直感的な操作で簡単に利用できるソフトウェア開発環境を装備しています。
―― ソフトウェア開発環境は、どのようにして利用するのですか。
簀戸 「Web HMI」というインターフェイスを持っており、Web ブラウザーからアクセスできます。ここで「CONPROSYS VTC」というタスク スクリプトを利用することにより、ビジュアルな画面上で各種機能コンポーネントをドラッグ & ドロップして、さまざまなタスク処理を組み込めます。
―― 収集したデータは Azure に集約するのですね。
簀戸 CONPROSYS SDK を使用して、直接 Azure にデータを送ることもできますし、ローカル サーバーに集約することも可能です。Azure に集めたデータは、Power BI で可視化できます。今後のファームウェア アップデートで Azure へのデータ送信をさらに簡単に行えるようにする予定です。
小牧工場における実証実験の取り組み
―― 小牧工場での実証実験は、いつごろから始まったのですか。
日比野 プロジェクトが始まったのは 2015 年 9 月、実際に CONPROSYS を導入し始めたのは 2016 年 2 月です。
―― なぜ実証実験を行おうと考えたのでしょうか。
日比野 自社工場を IoT のショーケースにするためです。小牧工場は、日本の多くの製造企業と同様に、多品種少量生産を行っています。このような工場が生産ロットの大きな台湾や中国の工場と戦っていくには、IoT を活用したきめ細かい最適化が必要です。しかし工場で利用している機器やシステムには多種多様なものがあり、業務システムやデータ分析システムなどの上位システムと統合するには、多大な労力がかかるという問題があります。CONPROSYS と Azure の組み合わせなら、この問題を解決できます。製造業界には「IoT はやってみないとわからない」という空気がありますが、既に成功しているショーケースがあれば、導入も広がると思います。
―― 実際に CONPROSYS をどのように活用していますか。
日比野 温度および湿度計測による環境管理、実装ラインでの基板生産枚数の管理、実装ラインでの消費電力監視、セル生産の稼働状況管理、静電チェッカーの計測結果のオンライン化、トルクドライバ作業前確認のオンライン化、ハンダゴテの温度管理などが既に稼働中です。
―― 具体的な成果は。
日比野 たとえば消費電力監視を行うことで、どの設備の消費電力が多いのかが把握できるようになり、省エネ化に向けたプランが立案しやすくなりました。またセル生産管理では、ある作業者の離席率が高いことがわかったのですが、その原因が部品を取りに行く時間だということが判明しています。このようなことがわかれば、部品の設置場所や作業者の動線を改善できます。
―― 静電チェッカー計測やトルク ドライバーの作業前確認は、どのような効果をもたらしていますか。
日比野 静電チェッカー計測は、作業者が帯電したまま作業を行うと部品が壊れることがあるため、必ず始業前に行っている作業なのですが、以前は計測結果が「OK」「NG」で表示されるだけでした。現在は、実際の計測データを数値として収集することで、どの程度の時間で帯電が進むのかがわかり、「NG」な状態になる前に対応指示を出せるようになっています。作業者は導電性の靴を履いて作業を行っているのですが、これが汚れると帯電しやすくなるので、帯電が進む前に清掃してもらうようにしています。
トルク ドライバーの作業前確認も従来から行っていたことですが、この結果をオンラインで見える化し、これに基づいて使用制限を行うことで、不適切な工具での作業が皆無になりました。これによって製品不良がなくなり、手直しの工数も不要になりました。
―― 工場見学も可能なのですか。
日比野 もちろんです。毎月 10 社 30 名程のお客様が見学に来ています。「これと同じものをまるごと導入したい」という引き合いも、複数のお客様からいただいています。
―― 見学者から特に好評な取り組みは。
日比野 ハンダ ゴテの温度管理は、多くのお客様が「おもしろい」とおっしゃいます。このようなニーズは計画当初には想像もしていなかったのですが、現場の声によって実現しました。現場だからこそわかる使い方というものは、他にもあると思います。
▲小牧工場に導入した CONPROSYS の全体構成イメージ
パートナーとしての TED の役割と Azure 採用の理由
―― 実証実験のパートナーとして TED が参画していますが、これはなぜですか。
谷脇 当社は以前からマイクロソフトの組み込み系 Windows をコンテック様に販売しており、その関係からお声がけいただくことになりました。
金田 マイクロソフト製品に関しては、TED さんは以前から当社のパートナーです。また 2016 年 4 月に CSP (マイクロソフト クラウド ソリューション プロバイダー) になり、Azure のディストリビューターとして販売を始めたのも、いいタイミングでした。
―― 今回 TED が果たしている役割は。
谷脇 当社は Azure の提供、CONPROSYS と Azure との接続の支援、工場側からのご要望に対応した Azure 上での開発、マイクロソフトと協業したマーケティング支援を担当しています。
―― 開発はどのように進められたのですか。
谷脇 CONPROSYS への Azure 接続機能の実装は、マイクロソフトから提供されている SDK を使用しています。Azure 上での開発は、「IoT ビジネス共創ラボ」のメンバーが開発したものを、当社が引き取る形でコンテック様に提供しています。
―― TED は IoT ビジネス共創ラボの幹事会社も務めていますね。ここでどのような活動を行っているのですか。
谷脇 IoT やビッグ データ領域のエキスパートが集まり、Azure をプラットフォームとする IoT プロジェクトの共同検証を行い、ノウハウを共有しています。製造現場だけではなく、エンタープライズ システムの経験を持つメンバーも多く、小牧工場での実証実験でもデータ蓄積や分析、可視化などで、エンタープライズ系の開発者にご協力いただきました。
―― CONPROSYS と連携するクラウドとして、Azure を採用した理由は。
日比野 マイクロソフトが信頼できる企業であること、料金がリーズナブルなこと、海外展開が行いやすいことを評価したからです。CONPROSYS は当初から日本だけではなく、中国やアジア、欧米でも販売していますが、Azure なら同一品質のサービスを、グローバル展開するのが容易です。
簀戸 最初から Azure ありきだったわけではなく、主要なクラウド サービスはほぼすべて検討しています。その結果、グローバル販売を行うという CONPROSYS の戦略に合致する有力なクラウド サービスの一つとして Azure を選択しました。
今後の展開について
―― 最後に、今後の展開についてお教えください。
谷脇 可視化をさらに推進するため、既にいくつかのプロジェクトが動いています。マシン ラーニングの活用にも取り組んでおり、これによって故障予測が可能になると期待しています。またセキュアな通信を確立するため、一般回線の通信における暗号化も提案してまいります。
金田 CONPROSYS と Azure の組み合わせは、今後間違いなく当社のメイン ビジネスになっていくはずです。IoT は、センサーやアクチュエータといったデバイスからクラウドに至るまで、幅広い技術や知見が求められます。当社はデバイス接続に強く、TED やマイクロソフトはクラウドに強いので、3 社が手を組むことで一貫性のあるシステムを提供できると考えています。今後もパートナーと協力しながら、IoT 市場の拡大を目指していきます。
谷脇 CONPROSYS の M2M コントローラーと Azure を組み合わせた「Azure IoT 評価キット」もリリースしており、トレーニングも含んだ形で提供しています。このようなキットもぜひご活用いただき、多くの製造企業の皆様に IoT の効果を体感していただきたいと思います。
―― 本日はありがとうございました。
1975 年 4 月に、株式会社ダイフクから社内ベンチャー企業として分離、独立。事業の機軸を「PC For All Automation」に置き、各種 I/O ボード、工業用パソコン、有線 & 無線 LAN、産業用 LCD 表示器、各種関連支援ソフトを開発および提供、30 年以上にわたって PC ベースの電子計測/FA 制御の市場をリードしています。2015 年 5 月には「簡単」「便利」「使いやすい」を追求した M2M/IoT ソリューション「CONPROSYS」を発表。製品をグローバル販売すると共に、自社小牧工場での IoT 実証実験も継続的に実施、その内容を IoT ショーケースとして公開しています。
1986 年 3 月に設立されたエレクトロニクス商社。1985 年には設計開発センターも開設、メーカーとしてのビジネスも展開しています。マイクロソフトの Windows Embedded 製品と Windows 10 IoT Enterprise の正規販売代理店として、組み込み機器向け OS のライセンスを販売。2016 年 4 月には Azure CSP (マイクロソフト クラウド ソリューション プロバイダー) プログラムによりクラウド ディストリビューターに認定され、Azure の販売も手掛けています。