月額課金方式でマイクロソフトのクラウド サービスを取り扱える CSP プログラム。そのパートナーとして活動しているクラウド リセラーがどのようにクラウド ビジネスに取り組み、いかなる成果を上げているのか、興味を持たれている方も多いのではないでしょうか。そこで、クラウド ディストリビューターであるダイワボウ情報システム株式会社 (DIS) に複数の CSP パートナーをご紹介いただき、インタビューを行いました。今回ご登場いただくのは、富士ネットシステムズ株式会社 (以下、富士ネットシステムズ) 。代表取締役社長の今井 和宏 氏をはじめとする 4 名のキー パーソンの皆様に、お話をお聞きしました。
写真左より、取締役 管理ビジネスグループ長 青木 茂 氏、代表取締役社長 今井 和宏 氏、ソリューションビジネスグループ フィールドサービスグループ長 山下 尊郎 氏、営業ビジネスグループ システムソリューショングループ 田島 颯人 氏
会社概要とクラウド ビジネスへの取り組み
―― まず御社の概要についてお教えください。
今井 当社は昭和 35 年 (1960 年) に通信機器のリペア事業を行う会社として創業しました。その後、通信工事や金融端末、スパコン保守などへと事業を拡大し、現在では情報通信の設計や構築保守事業、システム運用管理業務などにもビジネスを広げています。またクラウド ビジネスにも積極的に取り組んでいます。
―― どのような規模のお客様が多いのですか。
今井 通信系事業のお客様は 200 名前後、情報系事業は中小企業が多いですね。
―― ビジネスの状況は。
今井 PBX を中心とした通信系ビジネスは、市場の縮小が続いています。そのため 10 年以上前から、情報系ビジネスを手掛けるようになりました。具体的には PC の保守サポートやメンテナンス中心のビジネス展開を行っていましたが、ここでも商売は厳しいという状況です。そのためシステム構築などの開発分野やクラウドにも事業を拡大しており、ICT のプロ集団として新たなチャレンジを続けています。
―― その一環としてマイクロソフトのクラウドも取り扱っているわけですね。Microsoft Office 365 の取り扱いは、いつごろから始めているのですか。
今井 Microsoft Business Productivity Online Suite (BPOS) 時代にマイクロソフトのパートナーにならないか、とお声掛けをいただき、ぜひやろうということで、そのころから取り扱いを始めています。
―― DIS とお付き合いが始まったのは?
今井 4 年前からです。当初は富士通製 PC の取り扱いからスタートしました。その後 CSP プログラムが始まったタイミングで、DIS の CSP パートナーになりました。
―― Office 365 のお客様の数はどの程度ですか。
今井 CSP と Open を合わせて 40 ~ 50 社、シート数は約 2,000 です。
Office 365 活用を支援するサービス メニュー
―― BPOS 時代から取り扱っていたということですが、当初はご苦労もされたのではないですか。
今井 そうですね。情報系ビジネスを拡大するなら、マイクロソフトの看板をぜひ活用したいと考えて BPOS の取り扱いを始めましたが、当初は苦戦しました。BPOS なら中小マーケットの拡販が可能になるだろうと期待し、毎月セミナーを行っていましたが、なかなか商談が決まらない状況が続きました。興味を持ってもらえるようになったのは、この 2 ~ 3 年です。
―― ご苦労されながらも、諦めずに続けてこられた理由は?
今井 今後間違いなく拡大するクラウド ビジネスへの先行投資だと考えたからです。早い段階で参入したことでノウハウが蓄積され、それに基づいた多様なサービスを生み出すことができました。
―― 具体的には。
山下 導入前のコンサルを行う「Office 365 なんでも相談会」から、移行確認サービス、設定サービス、従業員様向けトレーニング、運用/障害サポートまで、一貫した支援サービス メニューをご用意しています。「Office 365 なんでも相談会」は 2013 年から継続して行っているもので、Office 365 の機能やご利用プランのご説明、導入にあたっての課題に関する相談などを無償で行っています。設定サービスは BPOS 時代から見積もりベースで提供していましたが、2015 年 6 月にメニュー化しました。トレーニングやサポートは 2015 年 8 月にメニューとして追加したものです。最も新しいのは移行確認サービスで、2016 年 8 月から開始しました。
―― このようなサポート メニューを用意しているのはなぜですか。
山下 Office 365 の導入は中小企業にとって、意外とハードルが高いからです。Office 365 自体の申し込みや利用は簡単なのですが、ドメインの取得や切り替えは他のサービスを使う必要があるため、中小企業の事務職の方では対応が困難です。実際にどうすればいいのか、プロバイダーも教えてくれません。このハードルをクリアすることは、中小企業に Office 365 を導入するための必須条件だと考えています。
―― 「Office 365 なんでも相談会」を無償で提供しているのも、すばらしい取り組みですね。どの程度の頻度で開催しているのですか。
田島 現在では当社オフィスで、月に 3 ~ 4 回のペースで開催しています。三越前駅か小伝馬町駅から歩いて来ることができるので、場所が来やすくていいねという方が、数多くいらっしゃいます。当社の Office 365 のお客様の多くは、この相談会に参加して導入を決定しています。導入後のトレーニングや運用サポートも、お客様から高く評価されています。
山下 コンサルから運用まで 1 社でまとめられるのは、当社の強みだと自負しています。当社のサポートをご活用いただくことで、シンプルな管理が可能になります。このようなサポートが可能になったのも、BPOS からの経験が活かされているからです。また Office 365 のプロビジョニングや ID 管理に必要なスキルを評価する「Office 365 認定試験 70-346」の取得も、社内教育プランの一環として取り組んでいます。これに関しては入社 3ヶ月までの取得を目標にしており、その後に MCP まで取得した社員も 10 人程います。
Office 365 と DIS への評価
―― Office 365 は御社の社内でも使われていますか。
青木 もちろんです。BPOS 時代から使い続けています。
―― ユーザーとして Office 365 をどのように評価していますか。
青木 ライセンスが安価で導入しやすく、利便性も高いと感じています。Microsoft Exchange Online や Microsoft SharePoint Online、Microsoft One Drive を活用することで、場所を選ばずに働けるようになります。また当社は E3 を契約しているのですが、常に最新の Office が使えるのもいいですね。
田島 営業では Microsoft Skype for Business をよく使っています。手軽に会議が始められるので、とても便利です。
山下 「働く場所を選ばない」という話は、刺さるお客様が多いですね。最近では「Teams で LINE (個人版) 利用をなくしましょう」という提案に興味をもっていただいています。
―― DIS 経由で CSP パートナーになったことのメリットは。
山下 最大のメリットは、Office 365 と一緒に他の商材を売りやすくなったことです。特に、Microsoft Surface のような端末が一緒に売れるケースが増えています。Office 365 のライセンス販売だけではなかなか売上が大きくなりませんが、Office 365 の提案をきっかけとして他の商材も販売できるのは、大きな魅力です。
田島 しっかりとしたサポートをしてもらえるのも、メリットの 1 つです。たとえば「Office 365 なんでも相談会」でも、発足時から DIS の専門家が参加してくださっています。相談会は新規のお客様がいらっしゃる場所なので、このようなサポートはたいへん助かります。また対象業種ごとの提案資料も用意されており、そのままお客様に説明できます。他のお客様の事例も数多く紹介してくれます。
山下 CSP によって月額契約が扱えるようになったことも、当社にとってのメリットになっています。毎月課金があるとコンタクトできる回数が増え、お客様の囲い込みが行いやすくなります。課金のタイミングで新しい機能を紹介することで、新たな商談につながることも少なくありません。CSP ライセンスの発注は、DIS のライセンス管理ポータルである「iKAZUCHI」を活用しています。このサイトは他の商材も扱っているので、ビジネスの幅を広げるのにも役立ちます。DIS との関係も、CSP が始まってからさらに強くなったように感じています。
今後のビジネス戦略
―― 最後に、今後のビジネス戦略についてお聞かせください。
今井 中小企業マーケットの開拓を、今後さらに積極化していきます。より多くの中小企業のお客様に Office 365 を導入していただくことで、当社のサポート ビジネスの拡大も可能になるからです。当社の売上に占めるクラウド ビジネスの割合は、
現在はまだ 1 ~ 2 割程度ですが、これを 3 ~ 4 割にしていきたいと考えています。
―― クラウドをビジネスの大きな柱にしていこうというわけですね。
今井 ただ、最近では Office 365 を扱う企業が増えているので、どう差別化していくかが課題になっていくでしょう。クラウド サービスのライセンスを販売するだけでは、十分な収益を獲得できません。付加価値をどのようにつけていくかが重要です。そのためサポート メニューの拡充や、Office 365 と連携したソリューション開発も進めていきます。これからもさまざまなところと連携しながら、独自性を出していきたいと考えています。
―― 本日はありがとうございました。
1960 年 5 月、電話交換機 (PBX) の工事および保守会社として設立。その後、金融端末やスパコンの保守、情報通信分野での設計/構築/保守、情報システム構築、クラウド ビジネスへと事業を拡大してきました。ICT のプロ集団として新たな挑戦を行い、最適なシステムとサービスを顧客に提供することで、社会の発展に貢献し続けています。