(この記事は 2017 年 8 月 9日にMicrosoft Partner Network blog に掲載された記事 Map Your Customer’s Journey to the Cloud の翻訳です。最新情報についてはリンク元のページをご参照ください。)
先日、Barry Briggs と私が共同執筆した『エンタープライズ クラウド戦略 (英語)』の第二版が公開されました。この無料の電子ブックは、これまでに何百社もの IT 環境と、そのクラウド移行プロセスを支援してきた経験をまとめたものです。この電子ブックでは、「どのように何から手を付ければよいのか」、「アプリケーション ポートフォリオのクラウド移行計画を立てるにはどうすればよいのか」、「移行による自社への影響はどのようなものか」といった一般的な疑問に答えながら、エンタープライズ ポートフォリオをクラウドに移行するにあたり、各 IT 部門が採用したアプローチ、戦略、ベスト プラクティス、プロセスを紹介しています。
クラウド移行への準備
クラウドの変革に着手する前に、顧客はまず IT に対する新しい考え方を理解する必要があります。この考え方には、クラウド移行の過程でさらに進化が求められます。進化の第一段階は、イノベーションや実験の文化を取り入れることです。従来の考え方に慣れた IT 部門にとって、これを受け入れるのはそれほど容易ではありません。これまでのように開発作業の入念な制御やリスク軽減を重視する代わりに、次の原則に従い、構想、実験、最適化のプロセスを短期間で完了できるようになる必要があります。
- 迅速に行動する: クラウドでは、新しいプロジェクトをわずか数クリックですばやく立ち上げることができます。「何度も試して最善の結果を選ぶ」ことを習慣にしましょう。
- 可能性を広げる: 単にクラウドに順応するだけでなく、新しいビジネス チャンスを活用できるように、新しいアーキテクチャやプロセスにもすばやく適応する必要があります。
- データに基づいて意思決定を下す: コストやシステムの利用統計情報など、各種データを測定して注意深く追跡し、IT の効率化を図ります。
- 簡素化する: できるだけ多くのサービスやアプリケーションを廃止し、適切なサイジングを行って、統合します。
- 情報を伝達する: 明確なコミュニケーション チャネルを確立して関係者に継続的に情報を伝達し、成果や影響を視覚化することで、関係者が関与する意欲を維持します。
クラウド移行の視覚化
移行プロセス全体を通じて重要になるのが、絶えず可能性を模索する姿勢を身に付けることです。アプリケーションのクラウド移行を進める中で、顧客は新しい成果をビジョン化する方法をパートナー様から学びますが、この新たな体制のすばらしいところは、顧客が考えもしなかったような可能性を常に提供できる点にあります。各アプリケーションを新たな環境のどこに配置するかを考えたり、さらなる投資の妥当性を検討したりすることは、IT エコシステムを刷新する絶好のチャンスです。引き続きオンプレミスで運用するアプリケーションについても、刷新によって時間とコストを節約できます。
アプリケーションの刷新
レガシ アプリケーションの対応方法に関して万能のアプローチは存在しません。ただし、この問題を解決するうえでは、Gartner が提唱する「5 つの R」のコンセプトを採り入れることをお勧めします。「5 つの R」とは、それぞれ廃止 (Retire)、置き換え (Replace)、保持とラッピング (Retain and wrap)、ホスト変更 (Re-host)、再構想 (Re-envision) の略です。
- 廃止: レガシ アプリケーションがもたらす価値がコストに見合わない場合には、廃止を検討するのが自然な選択です。それでも一部の機能は役立つと考えられる場合は、クラウドで実行する最新の統合アプリケーションにその機能を組み込む方法もあります。
- 置き換え: レガシ アプリケーションの多くは当初、代替製品が存在しなかったために開発されたもので、現在ではクラウドでの実行に適した最新のアプリケーションが存在する場合があります。また、複数のレガシ アプリケーションの機能を統合できる可能性もあります。
- 保持、ラッピング、拡張: レガシ アプリケーションが十分な価値をもたらし、TCO も高くない場合には、アプリケーションを保持して最新の「ラッパー」を適用することにより、さらなる価値とメリットの向上を図ることができます。
- ホスト変更: レガシ アプリケーションが十分な価値をもたらすものの、運用コストが高い場合には、ホストをクラウドに変更することで、管理の手間や運用コストを抑えられます。
- 再構想: レガシ アプリケーションが十分な価値をもたらすものの、移行が困難な場合は、アプリケーションを再構想して、クラウド内で再構築することを検討してください。
経験上、どのアプローチを採用する場合でも、基本的に 3 つの段階を踏む必要があります。つまり、実験、移行、変更の 3 段階です。個々のプロジェクトや顧客のニーズに応じて、これらの段階を並行して実施することも、順番に実施することもできます。
実験
既存のアプリケーションをクラウドに移行する場合でも、新しいアプリケーションを開発する場合でも、クラウド アプリケーションの開発、テスト、展開、保守に関する要点を把握するうえで、実験を欠かすことはできません。
移行
移行の段階では、IT ポートフォリオの大部分をいずれかの方法でクラウドに移行します。これには、社内の複数の部門にわたる協力と共同作業が不可欠です。たとえば、技術担当者、運用担当者、経営幹部チーム、ビジネス スポンサー、セキュリティの専門家、コンプライアンス担当者、法務部門、人事部門などの連携が必要になります。
変更
変更の段階 (多くの場合は移行の段階と並行して実施) では、クラウドを最大限に活用できるように厳選したアプリケーションの設計を見直すことで、スケーラビリティの向上や、他のクラウド サービスとの連携の強化をはじめ、多数のメリットを実現できます。この新たなクラウドネイティブ アプリケーションでは、機械学習、ビッグ データ、ストリーミング分析といった多種多様なクラウド サービスを利用できるため、以前とは比較にならないほど機能を充実させることができます。
後半の 2 つの段階に関する準備については、まだまだご説明したいことがあるので、今後の記事で改めて詳しく掘り下げたいと思います。それまでにぜひ、『エンタープライズ クラウド戦略』の電子ブック (英語) をダウンロードしてお読みください。
皆様は、顧客のクラウド移行をどのような方法で支援していますか。皆様が採用しているプロセスについて、マイクロソフト パートナー コミュニティ (英語) でお聞かせください。