3 年ほど前に OneDrive と OneDrive for Business の比較記事を書いてから少し時間が経ちました。クラウド ストレージは、メールと並んで最も馴染みのあるクラウド サービスで、市場の変化が大変激しく、多くのクラウド ベンダーがしのぎを削っているところでもあります。OneDrive、OneDrive for Business などのストレージサービスは 3 年前と比べて様々な変更が加えられました。今回の記事では、これらの変更点を踏まえて、改めて無料の OneDrive、有料の OneDrive for Businessをはじめとするサービスの違いについて解説したいと思います。
OneDriveとは?
OneDrive for Business の話をする前に、まず前からある無償の OneDrive がどういうサービスかということについて、おさらいしておきましょう。
OneDrive は、もともと、一般消費者向けの無償クラウドサービスのブランドである Windows Live サービスの 1 つとして 2008 年から日本でもサービスを行っている大容量クラウド ストレージサービスです。アカウントを作成することで、無償で 5 GB のディスク容量をクラウド上に持つことができます。
OneDrive は Windows や Office と統合される機能を持っていることが特長で、Office ファイルをアップロードすると、Office Online で閲覧や編集を行うことも可能です。Windows PC、Mac、スマートフォン、タブレットデバイスで利用できるOneDrive アプリを入手することで、Windows PC ではエクスプローラから利用、Mac では Finder から利用、Windows Phone、iPhone、iPad、Android では専用アプリからのアクセスが可能となります。また、OneDrive アプリがなくてもブラウザーからのアクセスも可能です。Windows 10 では OS に OneDrive アプリの機能が組み込まれています。
Windows では OneDrive アプリでエクスプローラとシェル統合を行うことができます。既定では、ユーザープロファイルフォルダーの下に「OneDrive」というフォルダーが作成され、クラウド上の OneDrive にあるファイルとローカル PC 上にあるファイルが双方向で同期されます。
Mac でも専用のOneDrive アプリのインストールにより、Windows と似たような Finder 統合のインターフェイスを実現できます。
プランは一般消費者向けの Office 365 である Office 365 Solo に含まれているプラン、OneDrive 単体の有料プラン、無料プランの 3 種類があり、有料プランでは、無料プランよりも価格に応じて多くのストレージ容量が提供されます。
図: 2017 年 10 月現在の一般消費者向けプラン
OneDrive for Business とは?
OneDrive for Business は、一般消費者向けの OneDrive で提供している機能を、法人・団体向けに管理者が中央から管理がきちんとできるように提供する仕組みです。OneDrive の機能は便利ですが、企業で利用する場合、意図しない形で情報が共有され情報漏えいしてしまったり、サービスが無断で中断されたりということがないように、企業で利用するに足りる条件を付加したものが OneDrive for Business であると考えてください。
つまり、一般消費者向けの OneDrive に対応する組織向け機能が OneDrive for Business です。前者は基本、無償であり、後者は有償ですが、なぜそういう違いが出てくるのかについてはブログ記事「2017 年度版: 一般消費者向けクラウドと組織向けクラウドの本質的な違い」をご覧ください。
それでは、OneDrive for Business の提供機能の詳細についてみていきましょう。
OneDrive for Business は、組織内ポータルである SharePoint の中にある個人用ドキュメント ライブラリのストレージです。SharePoint Online が付属しない単体のプランも存在します。また、オンプレミスの SharePoint 2016 でも OneDrive for Business の名称で個人用ドキュメント ライブラリがオンプレミスで利用できます。
使える基本機能は一般消費者向けの OneDrive と似ていますが、99.9% の稼働率を保証するサービスレベル契約 (SLA) がついているのに加え、バックエンドは SharePoint テクノロジーに基づいて作られていますので、Office ファイルのクイックプレビューやバージョン履歴の保持、チェックイン/チェックアウト、ワークフロー連携や、管理者による機能制限やポリシーの適用まで、組織で利用するのに足る信頼性と組織化された管理機能を提供します。
OneDrive for Business には 2 つのプラン (プラン 1 とプラン 2) が存在します。プラン 2 はより高額になりますが、より大量のストレージ容量や高度なセキュリティ/コンプライアンス機能が利用できます。
図: 2017 年 10 月現在の組織向けプラン
* 無制限の OneDrive ストレージをご利用いただけるのはサブスクリプションのユーザー数が 5 人以上の場合です。初期容量としてユーザー 1 人あたり 5 TB が割り当てられます。追加の OneDrive ストレージが必要になった場合は、その都度 Microsoft サポートにリクエストしていただけます。5 ユーザー未満のサブスクリプションの場合は、ユーザー 1 人あたり 1 TB の OneDrive ストレージが割り当てられます。
さまざまなデバイスとの連携については、Windows については、既出の OneDrive アプリでエクスプローラとシェル統合を行うことができます (かつてあった OneDrive for Business アプリは一般消費者向けの OneDrive アプリに統合され、いまは両者共通のアプリとなっています)。OneDrive と Windows PC を同期する設定を行うと、既定では、ユーザープロファイルフォルダーの下に「OneDrive - (組織名)」「OneDrive @ (組織名)」または「OneDrive for Business」というフォルダーが作成され (はじめてフォルダーを作成した時期に依存します)、クラウド上の OneDrive for Business にあるファイルとローカル PC 上にあるファイルが双方向で同期されます。この辺は OneDrive と似ています。
ちょっと脱線: OneDrive アプリのちょっと便利な機能
ここでちょっと脱線ですが、一般消費者向け OneDrive でも組織向け OneDrive for Business でも利用できる便利な同期機能として、ドライブの中で同期できるファイルやフォルダーを選択できるというものがあります。ローカルディスクの容量を圧迫することなく適切な量だけローカルにファイルを同期しておけるので、これはどちらの OneDrive を使っていても利用すべき機能です。
また、今後は Windows 10 Fall Creators Update でOneDrive アプリに実装される「ファイル オンデマンド機能」を使うと、ローカルに同期していないファイルもエクスプローラー上に表示されるようになります。これを利用することで、ますますシームレスに OneDrive が利用できるようになる予定です。
SharePoint, Office 365 と OneDrive for Business の違いは?
SharePoint には、チームサイトの中にもドキュメント ライブラリがありますが、OneDrive for Business との使い分けは、OneDrive for Business は組織の中においての自分管理のドキュメント (組織内個人としてのドキュメント) の置き場所、チームサイトなどでは、プロジェクトメンバーや全社員と共有することが前提のドキュメントを置いておく、といった具合に行います。
OneDrive for Business、SharePoint Online、Office 365 はそれぞれカバーしている機能の範囲が異なります。いずれも「組織内個人ストレージ」の機能は持っていますが、ほかにも機能がついています。
OneDrive と OneDrive for Business の機能比較表
いままで文章で説明してきたことを簡単に表にまとめてみました。表で一覧にすると、理解も深まると思いますので、ご活用ください。
機能 | OneDrive | OneDrive for Business (クラウド) |
OneDrive for Business (オンプレミス) |
---|---|---|---|
基本機能 | |||
アカウント | Microsoft アカウント | Azure Active Directory | Active Directory |
1 ユーザーあたりの利用可能容量 | 5 GB (有料で 1,000 GB まで追加可能) |
1 TB (増減は調整可能、 プランにより5TB 超 事実上無制限) |
(調整可能) |
サービスレベル契約 (SLA) | なし | 99.9% 返金制度あり | 運用者次第 |
ファイル | |||
アップロードできるファイルの最大サイズ | 10 GB | 15 GB | 15 GB |
禁止されているファイルの種類 | なし | ブロックされるファイルの種類 | ブロックされるファイルの種類 (調整可能) |
ごみ箱 | あり | あり | あり |
Office Online による閲覧/編集 | あり | あり | あり |
バージョン履歴 | なし | あり | あり |
チェックイン/チェックアウト | なし | あり | あり |
ワークフロー連携 | なし | あり | あり |
共同作業 | |||
Office ファイルの共同編集 | あり | あり | あり |
外部ユーザーとのファイル共有 | あり | あり | あり |
管理機能 | |||
機能の無効化 | なし | あり | あり |
ポリシー準拠の設定 | なし | あり | あり |
共有範囲の制限 | なし | あり | あり |
SharePoint 2016 その他の統合・管理機能 | なし | 一部あり (プラン2はインプレースホールド、高度な電子情報開示も利用可能) |
あり |
アプリ | |||
Windows Explorer | あり onedrive.exe (ダウンロード) Windows 10はOS同梱 |
あり onedrive.exe (ダウンロード) Windows 10はOS同梱 |
あり groove.exe Office 2013 以降同梱 |
Windows ストアアプリ | あり (ストア) | あり (ストア) | なし |
Mac | あり (ダウンロード) | あり (ダウンロード) | 未発表 |
iPhone/iPad | あり (ストア) | あり (ストア) | なし |
Android | あり (ストア) | あり (ストア) | あり (ストア) |
Windows Phone | あり (ストア) | あり (ストア) | あり (ストア) |
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